2023.03.28

【開催レポート】地域版SOIP NAGANO DEMODAY〜スポーツ×無限大の可能性をさぐる〜

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2023年3月6日、スポーツ庁が実施する「スポーツオープンイノベーション推進事業(地域版SOIPの先進事例形成)」の成果報告会、「スポーツ庁 地域版SOIP NAGANO DEMODAY」が善光寺本坊大勧進にて開催されました。

スポーツ庁長官・室伏広治氏、長野県知事・阿部守一氏、元フリースタイルスキー・モーグル日本代表・上村愛子氏によるスペシャルセッションの後、「信州ブレイブウォリアーズ(バスケットボール)」「松本山雅FC(サッカー)」「公益財団法人長野県スキー連盟(スキー・スノーボード)」の協力のもと行われた、実証実験の成果報告会を行いました。

アスリートとして世界で活躍してきた室伏氏、上村氏、また阿部知事の考える「NAGANO×スポーツの可能性」とはどんなものか? スペシャルセッションの模様をお届けします。

NAGANO×スポーツの可能性

スポーツ庁が「スポーツの成長産業化」と「スポーツを核とした地域活性化」を目標に、スポーツ×産業の連携で新しい価値やサービスの創出を目指して取り組んでいる本事業。長野県における可能性はどんなところにあるのか? 長野朝日放送アナウンサーの萩原早紀子氏によるファシリテーションのもと、それぞれの立場から期待する未来を語りました。

長野県知事・阿部守一氏:「冬季オリンピック・パラリンピックの開催県である長野県は、そのレガシーが多く存在しています。施設をはじめ、アスリートなどの人的資源もしっかり生かしていくことが重要。そのためには行政だけ、市民だけではなく、企業と一緒に取り組むことが長野県としての大きなテーマであり可能性でもあると思っています。

また、県としてはスポーツチームのみなさんと定期的に懇談をしていきたい。

長野県にはさまざまなプロスポーツチームがあり、これまでも地域活性に尽力していただいてきました。ただ、「スポーツ振興のこれからの伸びしろをどう生かしていくか?」という点においては、各チームごとに課題をもっている状態です。県としても真剣に考えていきたい課題だと考えています。

くわえて観光や教育の分野。スポーツや観光で人を惹きつける長野県にしていかなければいけないですし、教育の現場では教員の多忙化によって、部活動のあり方も大きな転換期にきています。今後は地域のみなさんと一緒に、子どもたちのスポーツ環境を支えていかないといけません。

本日ここにお越しいただいている皆さまと一緒に知恵を出し合いながら、さまざまな可能性を持つスポーツでどのように長野県の活性化、スポーツ振興、さらには各企業の発展につなげていくのか、取り組んでいきたいと思っています」

元フリースタイルスキー・モーグル日本代表・上村愛子氏:「私は兵庫県で生まれて、3歳で長野県に引っ越してきました。あの時長野に来ていなければ、わたしはスキー選手になれていなかったと思います。雪やスキーが当たり前に存在し、目の前にスキー場があるような環境で育ち、地域のチームの方々と幼い頃から一緒に練習をさせてもらった経験が今につながっています。

モーグルを始めたその年に全日本選手権に出場できたのも、競技を初めてたった4年で長野オリンピックに出場できたのも、地域の人たちによる「スキー選手を育てよう」という素晴らしいサポートと環境があったからです。

また、地球温暖化やさまざまな環境問題が叫ばれるなかで、雪やスキーが当たり前に身近に存在する環境を守っていけるように、すこしでも子どもたちに雪を身近に感じてもらうべく、去年絵本を出版しました。

日本国内で1年中スキーに取り組める環境は、長野か北海道くらいだと思います。長野には昔からスキー文化が根付いていて、スキーへの理解があり、応援してくれる地域です。長野県にはこれからも、子どもたちが夢を持って目指せる国際大会の舞台を支える場所であってほしいと思っています」

スポーツ庁長官・室伏広治氏:「長野オリンピックから25周年という重要な年に、このようなオープンイノベーションの場を開催できたことをうれしく思います。新型コロナウイルスによって、さまざまな人たちが経済的な影響を受けましたが、スポーツ界にも大きな影響がありました。運動会からトップ選手の大会まで、さまざまなスポーツの場が中止になってしまったのです。

今日、新幹線で東京から向かってくる途中、スキー道具を持った人たちをたくさん見かけて、ようやく『戻ってきたな』という感覚がありました。

ウィンタースポーツだけでなく、夏も冬も365日可能性のある地域になるために、どうイノベーションを起こしていくのか。先日、一足先に東京で行われた発表会では、参加したみなさんが真剣に取り組んでくださったおかげで、素晴らしいプレゼンがありました。この後、長野県での取り組みについて聞けるのがとてもたのしみです」

▼長野県のスポーツ振興で、どのようなビジョンを描く?

萩原早紀子アナウンサー:「さきほどのお話のなかで『スポーツで人を惹きつける長野に』といった話がありましたが、長野県としてはどのようなスポーツによる振興をお考えでしょうか?」

長野県知事・阿部守一氏:「『スポーツで人を惹きつける長野』になるため、まずは長野を拠点としたプロチームと課題を共有して共に取り組んでいきたいと考えています。いま、長野県のスポーツ政策は転換期にきています。2028年に開催予定の国民スポーツ大会。この大会を成功させること自体も大事ですが、それはまだ通過点。そこに至るまでのプロセスや、その先のプロセスも見込みながら、『スポーツ』で元気な長野県をつくっていく予定です。

そのためには行政の強みを生かして、教育、観光、プロチームとの連携などでスポーツの振興からスポーツによる長野県の活性化を図っていきます。

スポーツ分野はスポーツチームだけでなく、参加する人や見る人、応援する人などさまざまな人が地域でつながるもの。国民スポーツ大会に向けてこれから具体化するフェーズなので、そこから新しい価値がうまれるように取り組んでいきたいと考えています」

萩原早紀子アナウンサー:「上村さんご自身はこれまでアスリートとして活動されてきました。今後、長野県におけるスポーツ振興の夢やビジョンなどはありますか?」

元フリースタイルスキー・モーグル日本代表・上村愛子氏:「一競技者の立場でお話をさせていただくと、プロの活躍の場が増えたらいいなと思います。現状はプロリーグがないので、最初は国内の公式大会からアジア大会、W杯、世界選手権、オリンピックのような国際大会と、挑戦するステージが上がっていく形です。ただ、こうした大会に出場するだけだと、常に上を目指していかなければならないため、競技寿命も短くなってしまいます。

わたしが初めて出場した98年のオリンピックについて、今でも『あの大会で初めてモーグルを見ました』、『あれをきっかけにスキーを始めました』という人に出会います。あれから25年が経ちましたが、しっかりと現代に繋がっていると感じる出来事です」

「引退して9年年になりますが、先日、日本国内で行われるスキーの国際大会がいくつあるか、考えてみました。そうしたら、世界最高峰の選手が集まる大会は、年に1回開催されているんです。こうした子どもたちにプロの競技をみてもらえる場は、若い人たちが『こういう選手を目指したい』と思うきっかけにもなるので、多くあったほうがいい。

子どもたちに本物のプレーを見せてあげることが大事なので、国際大会などプロの競技を見られる場、夢をもてる場をこれから作っていってあげたいです。長野県として世界大会の誘致やトッププレイヤーの誘致に取り組むことは、日本の子どもたちに世界のプレーを見せてあげることにもなりますし、長野という土地のポテンシャルを世界に発信することにもつながると思います」

萩原早紀子アナウンサー:「最後に、室伏長官に伺います。長野県には世界で活躍してきたアスリートがいて、次世代を育てる諏訪プロジェクトがあり、たくさんのプロスポーツチームがあります。スポーツによる振興の可能性が多くあると思うのですがが、長官としての期待感をお聞かせください」

スポーツ庁長官・室伏広治氏:「長野県はウィンタースポーツの世界一の大会が行われた土地です。しかし、それで終わらずに次世代を育てる取り組みが実施されているのが素晴らしいと感じています。スポーツ人口を増やすことも、観光の目線でも、教育の目線でも、ウインタースポーツ以外でもフィールドが整っている長野なら、365日稼働する未来を目指せるでしょうし、きっと盛り上がることでしょう」

「また、長野県は若い人のアイデアをうまく吸い上げている印象です。若い人たちの周りにいる経験豊富な人や実績のある人たちが、彼らの感性に任せて、期待して育て上げる姿は素晴らしい。これこそがオープンイノベーションにつながると思います。

若い力を信じて、任せていく。もしかすると綱渡りのように不安定かもしれませんが、渡ってみないことには成長もしません。今後も、どんどん綱を渡らせていってほしいですね」